【コラム】公務員の世界は外国と思えばいい

先日、問題のある公務員に関する記事を読んだ。問題のある公務員をどうやって退職してもらうかの記事だ。公務員は法律の縛りが強く、また、労働組合の存在もあって、解雇することは難しい。民間企業であれば、1ヶ月前の契約解除を申し渡せば、特別なペナルティ等は無く解雇でるのだが、公務員は法律に守られている。それが職業のメリットの一つ。間違いない。あとは、給料や役職は基本的に年功序列になっている等、昭和のシステムが現役だ。

しかし、そうなると民間企業との働き方が違うのも当然のことである。私も地方自治体との取引が多いので、その文化はある程度理解している。民間とは文化が違うのだ。良くも悪くも。文化が違うということは国が違うといってもいい。国といっても資本主義のアメリカやイギリスではなく、中国やロシアといった社会主義国家と考えれば合点がいくこともある。もっとも、国が直接雇用しているという点では先の国と構造は似ているのだから。そして、近年、自治外は民間に近づこうとしている。これまた世界情勢に似ている。民間の感覚を根付かせようとしているのだ。多くの市長、町長が民間出身ということもある。

話は戻って私が目にした記事について。仕事ができない人はいらないという記載であった。先日、私は仕事ができないのではなく、仕事の素因数分解がされてないだけという記事を書いた。この記事では詳細にどんな仕事ぶりなのかが素因数分解されていた。その上で退職を促そうとしていたのだ。
その中で、解雇できないから職員の危機意識の薄さがあったのだが、そのあたりが私は違和感を感じた。民間企業だからといって失敗したら解雇になるという危機意識は問題。民間企業でも、どうせ首にできないだろうというスタンスで仕事をするスタッフはたくさんいる。私は20年民間企業で働いていたが、大赤字を記録したり、上司に反抗したりと中々の問題社員だった。それでも首にならなかった。まあ、風土の違いもあるが、解雇があるから指導を受け入れるというのはちょっと違う気がする。

問題職員が生まれる原因は様々だ、性格、政治感、病気や障害といったところであろうか。これらの原因を採用時に見極められるのかと言えば、おそらく、わからないだろう。面接なんて練習をしていればいくらでも演じることができる。民間企業でもこれは大きな問題である。

余談だが、私がイベントプロデューサーだったころ、ナムコで営業職を希望した新入社員はもれなく私のポストを希望していた。そして、2年たったら誰もいなくなった。全員退職だ。もはや笑い話で人事の採用担当や教育担当をいじったものだ。退職してほしいが退職してくれないという問題と同じように、退職してほしくないのに退職してしまう。そういう問題もある。

さて、私が考える”働かない”公務員問題の大元の現況だが、手本の不在と指導力の欠如だろう。

まず、手本の不在について。地方公務員のトップは首長(市長、町長)だ。公の役職の為に選挙となるのだが、職員はその仕事ぶり等を見ずに選挙の結果でトップの椅子に座る。そして特別職といわれる市長・副市長・教育長が生まれる。実質上の指導を担当する部長級(この呼び名も独特)はこの特別職の方針によって仕事のやり方を変えないといけない。そうなると、場当たりの仕事になる。私の業界は場当たりのプロフェッショナルというのが存在するのだが、一般的な仕事で場当たり前提というのは好ましくない。手本にならないからだ。
人気の企業の場合、創業者のカリスマ性が良くも悪くも手本となることが多いが、そうでなくても、職場で筋を通して仕事をする姿は参考になるのだ。地方公務員ではそういった人材(部長級)が生まれにくい環境であることは間違いない。

次に指導力について。これは、民間企業も共通の問題だ。多くの企業が間違えている人事配置だが、実績を積んだからその業務を教えることができると勘違いしている。プロ野球の世界で「名選手名監督にあらず」という言葉がある。優れた選手が優れた指導者になれる訳ではないという意味だ。元大リーガーのイチローさんが監督のオファーを断っているのもその為だ。つまり、指導者を育てられないのが多くの企業の問題だと思われる。指導するスキルを覚えさせずにいきなり放り込むのが日本的企業の特徴と言ってもいいだろう。ちなみに欧米企業の場合はマネージャークラスはそういったスキルを自分で身に着ける必要があることが多い。もちろん、作業レベルは隣にいて教えればいいだけだが、仕事を教えるというのはそういうものではない。コングロマリットと呼ばれる超巨大企業(日本にはない)になれば、MBA取得は必須になる。なお、その取得のための費用は個人負担だが。
ちなみに、昨今コーチングという手法が資格ビジネスで大繁盛しているらしい。それと一緒にしないでもらいたい。あれは、小手先の技を教えているだけである。そうでなければ、あんな安価で教えるというスキルを習得することなんてできない。

あとは環境についても改善する必要がある。
あまり知られていないようだが、地方公務員の仕事内容はブラックな事が非常に多い。サービス残業も当たり前だったりする。名刺も個人で負担する例も多く、民間に比べ給与待遇はいいが、会社(役所)から配給される備品は非常に少ない。関係団体の懇親会の参加費が自腹なんて結構ある話だ。
多くの首長はそこを改善しようとしない。当然だ、支出が増えると住民からのクレームにつながる。しかし、その経費が生産性に関わると割り切らないと環境改善による体質改善はありえない。

これらが、地方自治体(役所)の文化だ。民間企業を経験したら間違いなく外国という印象だと思う。さらに、これに加えて外郭組織(各種団体や補助金団体)との関連性は外交問題となるし、組合との関係は政治的な動きとなる。民間組織、それも、平成に出来上がった民間企業では考えられないしがらみが当たり前の世界になっている。

良く公務員は民間を見習えという言葉があるが、私はそう思わない。これだけ世界が違う事なので全く民間と同じ評価にするのは、それこそ元大阪府知事の橋下氏がやったような改革、いや革命が必要。私の知る限りそのぐらいの革命を起こしたのは他に一人。ふるさと納税で一石を投じた泉佐野市の千代松市長だろう。逆に民間が公務員を見習うこともあるはずだ。例えば、彼、彼女らは成果による報酬はほとんどない。つまりモチベーション維持は使命感になる。行動している公務員の多くは、本当によく勉強している。福祉関係であれば福祉制度について様々な知識を得る必要がある。なぜなら、福祉を求める人の窓口だからだ。報酬ベースではなく責任感ベースで業務を行っている人もいることを忘れてはいけないだろう。

公務員の世界を外国と思えば、その仕事内容にも興味が湧いてくる。

しかし、長文になったものだ。

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