神木隆之介と広瀬すずが主演のドラマ「学校のカイダン」
広瀬すずが演じる生徒会長ツバメが、
神木隆之介が演じる謎のスピーチライター雫井の原稿を元に演説するというドラマ。
これを、プレゼンのプロが解説してみたいと思います。
ドラマの演出的なものもありますが、非常に見ごたえのあるスピーチ。
第一話では、転校してきたツバメが生徒会長を押し付けられます。
実はこれは、全校を掌握しているいじめっ子グループの策略。
その中、クラスメートであり、副会長の油森が虐められている現場を目撃します。
彼は課外授業で起こったトラブルを押し付けられ、退学届けを提出します。
何事も無かったように受理する教師。生徒会長の所信表明の場にて行ったスピーチです。
今回のプレゼンの目的は説得です。
説得のプレゼンに必要なコトのひとつに事実があります。
いきなりの罵倒。会場は聞く耳なんて持っていません。ツバメは、マイクを投げ捨てて、拡声器に持ち替えます。
実は拡声器は、雑に音を出す反面、生の声がそのまま大きくなるので、効果的。
(本当は聞きづらいのでデメリットが大きいのですが)
私は油森が嫌いである。すべて彼に押し付ければいい。
意外な切り口です。聴き手が想定したのは「いじめをやめよう」というものでしょうから、
ここで、いきなり反対のことを話します。否が応でも話し手に注目しますね。
スピーチの背景を語るにおいて、冒頭で注目を得るのは非常に効果的な手法です。
彼がいなくなったら次はだれでしょう?
ここで、他人事だったものを聴き手自身の危機感に置き換えます。
耳を傾けていたものが、さらに興味を持たせます。
疑問を投げかける事で参加者の心の中に自身の解答が生まれます。
教師の非を共有し、覚悟(退学届け)を見せつけます。
ここで動画が配信されます。
ここは動画が良いのではなく、「事実」を突きつけているわけです。
言葉でいくら話しても、意見とされますが、動画は事実。
このこと自体を否定することはできません。これは、学校に向けて見せている訳です。
つまり、キーパーソンは校長(教師)
いじめっ子グループが扇動する罵倒の中、こう言います。(かなり端折ってます)
誰も悪くない、私も同じ。みんな、合わせていただけ。
私もそうだった、毎日が怖かった。毎日お祈りして何事の無いように願っていた。
私も一緒になっていじめていたのだから、自分が大嫌い。
いじめる方も、いじめられる方も、訳もわからなく我慢している。
そんなのは私は嫌だ。
だから、私は学校を変えたい。
ここは雫井は何も指示していません。こういうことを言うだろうと想定したのでしょう。
誰が悪いと特定せずに、聴き手に暗に解いていますね。
生徒は反発します。しかし、校長は退学届けを破り捨てます。
キーパーソンは校長ですから、このスピーチは成功したのです。
生徒が何を言おうが、目標は達成されました。彼らの勝ちです。
さて、雫井のやった事とは・・・・。
ツバメの行うだろうスピーチに対して、
①背景を明確にする(聴く耳を持たせる)
②事実を明確にする(反論をさせない)
③覚悟を明確にする(言葉に重みを持たせる)
これを加えることで強固なフレームを作り上げ、
その上で、自分の意見を出して共感を得るという、感情に訴えるプレゼンテーションだったという訳です。
原稿を書くだけがスピーチライターではありません。
スピーカーの弱点を補うのもスピーチライターです。
良いスピーチでしたね。
もちろん、悪い部分もありますが、それを補ういいところが満載でした。
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